コミックマーケット準備会の収支解剖

同人誌

本記事ではコミケ準備会の収支について各種データをもとに分析しています。なのでかなり長い記事になっているので結論だけ見たい方は「6.収支まとめ」までスキップするのを推奨します。

はじめに

 同人誌即売会といえばコミックマーケット。今年も夏コミの時期が近づいてきました。お盆の時期は帰省よりコミケ参加を優先するオタクの方々も多いのではないでしょうか。こんな名前でブログをやってる筆者も、例に漏れずその一人です。

 さて、そんなコミケですが、2019年の夏コミ(C96)以降、入場が有料となっています。久しぶりに参加しようと思ったらチケットやリストバンドを買わないと入れなくて衝撃を受けた方もいたんじゃないでしょうか。

有料化の背景

 有料化の背景は2020年に開催した東京オリンピックが挙げられます。オリンピック開催に伴い、コミケの例年の開催地であるビッグサイトの大部分を占める東展示棟が準備期間の間使用できなくなってしまいました。代わりに南展示棟青海展示棟が仮設されることになったのですが、東展示棟のキャパを埋めるには至らず、会場スペースが75%減少したとコミケ準備会の共同代表である市川氏が明かしています。→インタビュー記事

 減った25%分のスペースをどう補填したかというと、通常3日間開催だったところを4日間開催としたわけです。
 100%×3=300%→75%×4=300% としたわけですね。

 日数が増えたことで当然、会場費や警備費などの経費も増えるわけで、その応急処置として来場者に有料リストバンドを購入してもらい、運営費に充てたわけです。

 インタビュー記事での市川氏の発言から、東展示棟が自由に使えるC99までを有料化の期間として当初は想定していたようです。※しかし、現在のC106に至るまで有料化が解除されたことはありません。

当然の疑問:なぜ有料化を辞めないの?

 では何故、コミケ運営は東展示棟が自由に使えるようになった今、そしてコロナ禍が収束した今もなお、入場を有料にしているのか。当然の疑問です。中にはこう考える人も多くないのではないでしょうか。

 『もしかして有料チケットの稼ぎが良かったから味を占めたんじゃないの…?』

と。かく言う私もそう思っています。

 何せコミケ準備会は今までに収支報告をしたことが一切ないので、その財務内容が適切かどうかを判断することが不可能なのです。

収支報告の必要性について

 もちろんコミケ準備会は「有限会社コミケット」という非上場企業ですので、計算書類や有価証券報告書等の公開義務はありません。ですが、作成の義務はあります。

 会社法で定められているように、有限会社であろうと損益計算書貸借対照表などの計算書類の作成は義務付けられています。また、法人税を申告する際は税務署に計算書類を提出する必要があります。

e-gov法令検索より会社法第四百四十条(計算書類の公告)
※整備法2条1項により有限会社は株式会社として扱う

 なので、公開しないのは「少人数だから計算書類の作成なんて出来ないんです。」といった理由では断じてありません。法律で定められた義務なので絶対に作成しています。作成した上で公開しないという選択をとっているのです。

 ところで、コミケの理念として以下のような言葉があります。

『コミックマーケットは、サークル参加者、一般参加者、スタッフ参加者、企業参加者等、すべての参加者の相互協力によって運営される「場」であると自らを規定し、これを遵守する』出典元

 「みなさんの協力で成り立ってます〜」というやつです。コミケ準備会のツイッターや現地のスタッフによる声かけなどでよく聞くフレーズではないでしょうか。スタッフも参加者も関係なく、共に運営する立場ということですもんね。このような大掛かりなイベントでは至極真っ当で素敵な考えだと思います。

 ただ、このようなことを長年謳っておきながら、実態はこうです。
 『参加者から入場料として金銭を協力してもらっているが、スタッフはその金の流れを参加者に教えることはしない。』

 スタッフと参加者は同じ運営する立場にいると理念で掲げているはずなのですが、おかしなことに金の流れという一番透明にしなければいけないことが共有されていないのです。

 要するに私の言いたいことは
準備会に収支報告の義務はないけど、君たちの掲げている理念に照らし合わせれば、収支報告しないのは誠実さに欠けるんじゃないの?(入場有料化の理由について説明がない現状では特に)」
ということです。

 そこで以下ではコミケの損益計算書(概算)を作成し、現在まで続く入場有料化が正当なものかどうかを検証したいと思います。

公開情報から読み取れること

 収支の概算を求めるために、まずは前提条件として公開情報をまとめます。

①有料リストバンドの価格推移

 まず入場料として購入が義務付けられている有料リストバンドの価格推移はどのようになっているのか。C96〜C106をグラフにしてみました。

コミックマーケット公式サイト(https://www.comiket.co.jp)より

 C96、C97の有料化初期は500円台と安く、カタログに全日程分のリストバンドが同梱されていたので、C96以前もカタログを買っていた人達にとって負担は変わりませんでした。

 C98はコロナ禍最盛期。外出自粛が政府から推奨され、各地でイベントが中止になっていましたね。コミケも例外ではなく、直前になって中止が発表されました
 それに伴いビッグサイトのキャンセルをしたと思いますが、キャンセル料金が最悪のケースだと全額負担になります。ビッグサイトのHPを見ましたが、展示スペースのキャンセル料の規定が載っていなかったので以下では全額負担として話を進めていきます。

 C99以降では料金体制がガラッと変わります。チケット種類の多様化大幅な値上げです。これはおそらく、C98の開催中止で発生した負債を取り戻す為だと思われます。

 C102以降は定価が落ち着いてきます。C98の負債はC99〜C101で大方取り戻せたと考えて良さそうです。

②来場者数とサークル出展数

 次は来場者数とサークル数について。同じくC96〜C106について集計しました。

 C96、C97は4日開催のため、いずれも来場者数の歴代最多記録を更新しました。C99以降は2日開催であることコロナ禍の余波が残っていることから激減しますが、年々回復傾向にあります。

 今回の収支分析では来場者数やリストバンド価格の安定してきたC105をモデルケースとして進めていきたいと思います

③カタログ発行部数

 最後にカタログ発行部数について。直近の公称部数実売部数が公開されていないので、正直正確な数字がわかりません

 なんとか部数に繋がる資料がないかと探した結果、1つだけ見つけることができました。コミケ準備会が作成した資料「コミックマーケットとは何か?」(2014年1月改訂)です。

この資料の8ページ目に大まかな発行部数が書いてあります。それによると、
 冊子版カタログが約10万部
 DVD-ROM版が約4万部
合計14万部が2014年時点の発行部数だったようです。
(DVD-ROM版は現在廃止。当時もWEB版カタログは存在したが上記数字には含まれていない。)

 2014年1月改訂なので、2013年開催のC84かC85の数字でしょう。C84が参加者総数59万人C85が参加者総数52万人なので、参加者総数の4分の1程度を発行部数として設定しているようですね。

 C105もこの割合でカタログを発行していると仮定すると、参加者総数30万人の4分の17万5千部です。以下ではこの数字を発行部数として使用します

収入について

 考えられる収入源は大きく分けて4つ。

①入場料収入

②サークル参加費

③カタログ販売収入(メロブなどが委託販売するため2750円以下。1時取次)

④公告収入

そのほかにもコミケ側が用意している紙袋やなどのグッズ取扱収入が考えられますが、規模はそこまで大きくないと考え省略します。

 また、当日は数多くのメディアが取材しますが、取材をする側が主催側にお金を払うようなケースは滅多にありません。取材にかかる収入は無いものと見ていいでしょう。

収入① 入場料収入

 まず参加者から徴収する入場料ですが、先ほどグラフで紹介した公開情報だけだと、全体の来場者数しか情報がありません。入場料はアーリー、午前、午後で料金体系が3つあるので、収入を概算するためにはこの割合を考えなくてはいけません。

 そこで着目したのが、C100の入場時間枠です。C100当時は3種のチケットをチケットペイで購入し、入場時間枠が事前に抽選されるというものでした。この枠は、どの時間帯でもおおよそ一定人数であることが予想されますので、チケット種別ごとの割合を求めることができます。

コミックマーケット100チケット販売について より引用

 この入場時間枠の表を見ると、アーリー:午前:午後の割合は東展示棟で2:7:3となっています。西、南展示棟も似たような割合です。西と南の会場規模からさらに細分化して割合を考えることもできますが、東展示棟の規模が他2つと比べて倍ほど違うことから、東展示棟の2:7:3を使えば精度は十分かと思います。

 つまり、コミケの来場総数のうち、1/6がアーリー、7/12が午前入場、1/4が午後入場ということになります。

 C106において来場者数は300,000人。更衣室利用者数12,540人がその内訳に含まれていることから、その分を引いた数を分母として考えると、

 人数(人チケット単価(円合計金額(円)
アーリーチケット47,9105,000239,550,000
午前チケット167,6851,210202,898,850
午後チケット71,86544031,620,600
更衣室チケット12,5403,00037,620,000
300,000511,689,450

 というふうに概算できます。なんと5億円以上もの入場料収入となりました。アーリー参加者は全体の1/6ですが、チケット単価が高いことから売上が一番多くなっていますね。

収入② サークル参加費

 お次はサークル参加費。出展サークルが払う会場のスペース代です。

 これは来場者数の図表で補足情報として記載しましたが、一般サークルの場合は1区画7,000円です。
(※これはシステム使用量を差し引いた後の金額です。システム使用量はコミケ準備会が負担している分とペイアウトが釣り合っているものと考え、ここで除外することで以後費用を概算する際にも無視することにします。)

 そして企業ブースでも同様にサークル参加費が存在します。これはコミケ側の公開情報では判明しませんでしたが、実際に参加した企業のHPで紹介されていました。それによると

 1コマ65万円ミニブース27万円とのことでした。

 一応、企業ブースに出展した経験のある知人に確かめてみましたが、これで合っているとのことでした。余談ですが、設営費がこれにプラスでかかってくるので、その知人は3コマ+施工代でトータル300万円以上の出費になったと言っていました。企業にとっては出展が広告宣伝も兼ねているので、そう考えたら安い出費なのかな…?

 話が逸れましたが、これで一般、企業ともに単価が判明しました。あとは単純に参加サークル数を掛ければいいだろうと思っていたのですが…実態はスペースの数>サークル数なのです。

 1サークルで2つのスペースを使うところが案外多いからですね。所謂「壁サー」や「お誕生日席」というやつです。

 ということはつまり、会場マップのスペース数を全て足し合わせれば、サークル参加費としての売上がいくらあったか、実態が掴めるというわけです。

C105会場マップ(東1〜7、西1〜4、南3〜4 ※南1はコスプレエリア、南2と東8は更衣室)

 というわけで数えました。(疲れた…)

 1日目2日目
東1〜32,3972,3974,794
東4〜62,3972,3974,794
東71,0071,0072,014
西1〜21,4521,3962,848
合計7,2537,19714,450
C105の一般サークルスペース数

 1スペースあたりの参加費は7,000円なので、14,450スペース×7,000円で101,150,000円がコミケ準備会の売上となります。

 次は企業のコマ数について。

C105企業ブースのコマ数

単価65万円が257コマ167,050,000円の売上。

単価27万円が17コマ4,590,000円の売上。

 表にまとめると

 売上
一般¥101,150,000
企業¥167,050,000
企業ミニブース¥4,590,000
 ¥272,790,000
C105のサークル参加費による売上

 というわけでサークル参加費による売上の総計は約2.7億円という結果になりました。

収入③ カタログ販売収入

 カタログ販売収入ですが、公開情報③で上述した7万5千部を発行部数とします。定価をかけるだけなので単純ですね。

75,000(部)×2,750(円/部)=206,250,000(円)

 約2億円の売上だと概算できました。

収入④ 広告収入

 3つ目は広告収入です。なんのことを言ってるかというと、カタログに広告出稿する企業から得られる広告料のことです。雑誌や新聞に時計や化粧品などの宣伝ページが挟まれていることってよくありますよね。あれのことです。

 広告料金単価は各媒体で公表されていることが多いのですが、コミケカタログに関しては残念ながら非公表となっています。

 ですので、他雑誌の料金単価を参考にしたいと思います。サブカル系かつ発行部数が同程度(7.5万部前後)の雑誌をいくつかピックアップしてみると…

電撃Nintendo」「週刊ファミ通」「フィギュア王」の広告料金単価

 「電撃Nintendo」と「週刊ファミ通」は出版会社がどちらも大手のKADOKAWAですので、一般相場より高めの単価設定となっているかもしれません。これを加味してカラーページは3万部発行の「電撃Nintendo」、モノクロページは5万部発行の「フィギュア王」を参考にすることにします。

広告スペース印刷料金単価頁数料金単価×頁数
表24色¥800,0001¥800,000
表34色¥600,0001¥600,000
表44色¥1,000,0001¥1,000,000
本文1頁4色¥600,0002¥1,200,000
本文1頁1色¥200,00015¥3,000,000
本文1/2頁1色¥100,0002¥200,000
本文1/4頁1色¥50,00012¥600,000
 合計   ¥7,400,000
C105広告料金表(料金単価は電撃Nintendo,フィギュア王から抜粋。頁数はC106カタログのもの)

 全部で740万円とこれまでの収入に比べてかなりコンパクトに収まりましたね。なお、同人誌即売会関連の広告費は無料となっているので、省いています。

収入合計

 以上①〜④の収入をまとめると

入場料収入511,689,450
サークル参加費272,790,000
カタログ販売収入206,250,000
広告収入7,400,000
998,129,450

費用について

費用は下記の6つがメインになるでしょう。

①ビッグサイト利用料

②ビッグサイト光熱費

③机椅子レンタル代

②カタログ制作費

⑤販売委託費

⑥警備費

 なお、スタッフの人件費は今回0円として考えます。※準備会がボランティアであると公言しているため。
 また、会場の椅子や机を配置する設営費についても、一般の参加者から有志を求めて行われているため、同様に0円で考えます。

費用① ビッグサイト利用料

 おそらく最も支出が多いのはビッグサイト利用料でしょう。これはビッグサイト公式が料金設定を公開しているので誤差なしで計算できそうです。単価をまとめたのがこちらです。

会場単価/1日会場単価/1日
東1¥3,619,000西1¥3,707,000
東2¥3,487,000西2¥3,707,000
東3¥3,619,000西3¥1,947,000
東4¥3,619,000西4¥2,849,000
東5¥3,487,000南1¥2,090,000
東6¥3,619,000南2¥2,090,000
東7¥4,873,000南3¥2,090,000
東8¥1,287,000南4¥2,090,000
東、西、南 合計 ¥48,180,000 
ビッグサイト利用料金(公式HPより)

 2日間だと2倍なので96,360,000円、つまり1億円弱だと求まりました。

 そのほかにも運営側の事務所として会議室を借りているかもしれませんが、展示棟と比べると誤差のような金額なのでここでは無視します。

 なお公式HPにも記載ありますが、複数日使用したとしても割引は無いようです。あと、上記単価には電気、空調料金は含まれていません。そちらは次で考察します。

費用② ビッグサイト光熱費

 電気料金や空調料金はビッグサイトの利用手引きに記載があるのでそちらを参照します。

東京ビッグサイト展示施設利用の手引き より

 まずは空調料金について。開場時間以外も稼働しているのは確実なので、24時間×2日間フル稼働を想定します。東、西、南の空調単価を合計すると551,100円/時間となるので、48時間で計算すると

空調料金(2日間):26,452,800円

となります。

 次に電気料金。これは試算が難しそうです。一般的な展示会では1小間(9㎡)につき1kWを最大供給量に設定するのが慣習となっているようです(Inter BEEや電化製品等の展示会)。つまり最大値は111W/㎡で、実際に使用する電力はもっと少ないはずです。コミケは会場照明がメインの電力であり、個人サークルが消費する電力はほぼ0です。企業サークルは照明設備を使うので少し多いかもしれませんが、一般的な展示会より電力消費は少ないはずです。企業サークルで50W/㎡個人サークルで10W/㎡ほどではないでしょうか。個人サークルが圧倒的多数なので平均を取ると少し多いかもしれませんが、間を取って30W/㎡としましょう。

 東、西、南展示棟の総面積は115,420㎡なので、毎時の使用電力は115,420(㎡)×0.03(kW/㎡)=3,462.6(kW)と求まりました。よって

基本料金:(3,462.6-1,000kW)×77.0円×2日間=379,240円

従量料金:3,462.6kW×48h×34.59円=5,749,024円

空調と併せて32,581,064円という結果になりました。

費用③ 机椅子レンタル代

 ビッグサイトでは机が2,200円、椅子が330円でレンタルできますが、コミケは長年「便利社」という業社から机と椅子をレンタルしています。便利社の情報はネットに殆ど残っておらず、レンタル料金がわかりませんでした。

ですので他の業者を何社か見ましたが、机は1,300円椅子は300円ほどが相場となっていたので、この数字で試算します。(実際には大量割引や得意先割引があるのでこれ以下でレンタルできそうですが

 レンタル数ですが、1サークル(1スペース)に机1台、椅子1脚が初期配備されています。収入②で上述した通り、スペース数は東西併せて7,253個あるので机と椅子も同数あるかと思います。

 ただし、1スペースで椅子を2つ使う場面も多く、実際には8,000脚ほどの椅子を準備会はレンタルしているでしょう。2つ目の椅子はサークルが600円(当日1,000円)支払い準備会から貸してもらうシステムになっており、余分に借りた椅子についてはむしろ準備会の利益になっているはずです。

 簡略化のため利益分を考慮しないことにしますので、机椅子それぞれ7,253個で試算すると

:7,253(台)×1,300円=9,428,900円

椅子:7,253(脚)×300円=2,175,900円

合計して11,604,800円ですね。前述しましたが、割引やサークルからのレンタル料によるマイナスを考慮していないので、この数字は実際より多めになっているでしょう。

費用④ カタログ制作費

 そして一番概算が難しいであろうカタログ制作費。カタログの原価は「用紙費」「印刷費」「輸送費」の大きく分けて3つで構成されます。これら単価を調べたのですが、大ロットのBtoB向け情報は公開情報では見つかりませんでした。仕方がないので、今流行りのGPT-5で相場を教えてもらうことに。(こういう時ビッグデータ分析できるAIは便利ですよね。いい時代です。)

Chat GPT(GPT-5)からの回答

 なるほど。一部あたり400円〜550円ほどらしいです。

 上記は製造原価だけですが、カタログには準備会以外が執筆しているコラムや漫画もあるので、それら原稿料も加わることになります。それを加味して一部あたり600円を原価として設定しましょう。

 カタログ販売収入で使用した7.5万部という発行部数で計算すると

カタログ制作費:75,000(部)×600(円/部)=45,000,000円

となりました。

費用⑤ 販売委託費

 そして見落としがちなのが販売委託費。カタログ販売収入で概算した金額は定価がまるまる収入になっていましたが、実際は異なります。書店(メロンブックス、とらの穴など)へ卸す際は定価以下で卸し、その金額が収入となるのです。

 今回は収益認識とか全く考えていないので、定価と卸値の差額を費用としてここで計算します。

 出版業界のスキームでは「出版社→取次業社→書店」というような構造になっており、それぞれで卸値が異なり、その差額で各社の儲けが出ます。取次業社というのは、出版社の発行物を管理し、全国の書店へ輸送する仲介業社のようなものです。取次業社を使うことで出版社は在庫管理に使う倉庫代や全国の書店と個別に交渉する手間が省けるという寸法です。

 相場として出版社→取次業社は定価の60〜70%で卸値が設定されているようですので、65%で概算します定価×(1-卸率)×部数で求めると

委託費:2,750×(1-0.65)×75,000=72,187,500円

 コミケカタログの場合、製造原価がそれほどかかっていないので委託手数料が重く見えますね。

費用⑥ 警備費

 費用の部ラストは警備費です。コミケは準備会の人間や有志のボランティアがメインで誘導係をやっていますが、彼らはその名の通り無償で仕事をしているので費用はかかりません

 しかし、プロの警備はお金がかかります。ボランティアが目立って隠れていますが、コミケではプロの警備も参加しているんですよね(参考記事)。何名ほど雇われているのか分かりませんが、1万人以上の来場者があるイベントでは警備員50人以上配置が目安となっているようです(株式会社ガードアクシスHPより)。コミケでは来場者が30万人ほどなので比較対象にはならないですし、ボランティアが担当している箇所を除くとなると余計推測が難しいです。

 肌感覚として警備の人間を会場で見かけたことが今までに殆どないので、ざっくり200名ほどではないでしょうか。※こればっかりはデータも何もない推測なので信頼性はあまりありません。

 そして、警備員の単価相場を各社見てみましたが、8h勤務だと資格なし警備員が15,000円〜20,000円ほど、雑踏警備資格者が18,000〜25,000円ほどでした。

 全員が全員資格者ではないと思うので、間をとって1人日2万円とすると

警備費:20,000(円/人日)×200(人)×2(日)=8,000,000円

収支まとめ

 以上で求まった収入と費用の概算額を簡易版PL(売上総利益まで)にまとめました。

 粗利で7億を超える額を叩き出しています。ここから更に人件費家賃等が引かれることになるのですが、流石に赤字化することはないと思われます。

 というか入場料収入が発生したことで売上総利益(粗利)3倍以上膨れ上がっていることに驚きです。

 ちなみにこれC105一回分の収支ですからね。通期だと単純計算で14億の粗利となります。

 なお、概算であることや公開情報からの推測であることを何度も言っているので誤解しないとは思いますが、このPLは正確な値ではない可能性があります。
 調べてみて分かりましたが、コミケは公式からの情報公開が極端に少ないです。内部の人間しか知らない収入や出費がある可能性は多分にあるので、その辺りをご了承ください。

入場料有料化の妥当性

 さて、ここで注目したいのが「入場料収入の5億円が無くても粗利は2億円以上担保できている」という点です。

 準備会は赤字化を防ぐために入場料収入を作ったと思いますが、それはつまり「それ以前の人件費等の販管費が2億円ほどかかっていた」ということになります。

 それはつまり、入場料収入5億円は販管費2億円という損益分岐点を補うにはあまりにも多すぎる収入であると言わざるを得ません。

 入場料収入が増えてから開催ごとに溜まっていく+3億円はどのように使われているのでしょうね。
 

最後に

 批判的なことをたくさん書いてしまいましたが、私はコミケが大好きです。参加者も一丸となってイベントを作り上げていく雰囲気や、日本最大の同人誌即売会というのは大きな魅力です。だからこそ、コミケ運営側の説明不足や不透明性がとても残念に感じられるのです。

『コミックマーケットは、サークル参加者、一般参加者、スタッフ参加者、企業参加者等、すべての参加者の相互協力によって運営される「場」であると自らを規定し、これを遵守する』

 運営側には今一度、この理念と自らの運営体制を顧みてほしいと思ってしまいます。

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